クリーニング店経営のヒント

スタッフ教育
クリーニング店のクレーム回避には「意識」が重要

曖昧な表現は、都合の良い意味に解釈される

クリーニング店にとっては、お客様からのクレームが悩みの種ですね。各店ではクレームを防ぐために、店頭でのお預かりの際に確認すべき事項についてマニュアル化するなど、細心の注意を払っていることと思います。ただし、単にマニュアルを作るだけでなく、あるポイントに気をつけておかないと、クレームがより大きくなってしまうこともあるので要注意です。

とあるクリーニング店の例を見てみましょう。少し気難しそうなお客様が洗濯物を預けに来られました。パートの女性はマニュアルに沿って、一つひとつの項目について漏れがないようにキッチリと説明をして、同意を得ていきました。気難しそうだったお客様もこの説明に納得された様子でしたが、最後に「このスーツのシミ、きれいになるといいなあ」と何気なくつぶやかれたのです。一通りの説明を終えてホッとしたパートのスタッフは笑顔で「なると思いますよ」とつい言ってしまいました。

クリーニングが仕上がった後、結果としてスーツのシミは落ちていませんでした。お預かり時にシミが落ちないかも知れないという説明はキッチリしていたのですが、最後にポロッと発した「なると思いますよ」のひと言がいけなかったのです。「店員はシミが落ちると言っていました」とクレームへと発展していきました。

これは決して極端な例ではなく、スタッフが何気なく言った言葉をお客様は「約束をしてくれた」と感じられることが多いのです。「思います」という曖昧な表現。スタッフからすればひと通りの説明と同意を得ていた上でまさに「思い」を述べたに過ぎなかったのですが、お客様からすれば違っていました。いろいろ細かいところは説明を受けた上で、お店の総合的な見解としては「きれいになる」と約束してくれたものと受け止めたのです。曖昧な表現は、都合の良い意味に解釈されてしまう。その曖昧さがクレームにつながるという、最も危険なパターンです。

ホッとした瞬間は特に要注意

また、注目すべきは、このクレームが緊張の後のホッとした瞬間に発した一言が原因になって起きていることです。あるデータによるとエベレスト登山の遭難死の約7割は下山時に起こっているそうです。そこには様々な要因が考えられますが、頂上を制覇したという緊張から解放されたことによる気の緩みも重要な要素として挙げられます。クレーム回避のためにその対応をマニュアル化し、ロールプレイングの実施などで徹底して疑似訓練していくことは大切なことです。ただし、アクシデントというのは、想定をしていない範囲で、しかも非常に小さなキッカケから起こり得ることを心に銘じておきましょう。店舗(現場)では、マニュアルには記しきれない想定外のことばかりが起きてしまいます。その中でクレームを防ぐためには、スタッフ1人1人が「不用意な発言はしない。確証のない約束は決して行わない」ということを意識していくことが一番でしょう。開店前などに「ちょっとした気のゆるみが事故を生む」といったことを確認しあったり、「このシミ、落ちますかね?」というお客様からの質問に即答するという「1分ロープレ」を繰り返すだけでも、意識と対応レベルは随分と違ってきます。

規準の改訂でクレームの悩みが減ったわけではない

別のコラムでも取り上げましたが、2015年の10月にクリーニング賠償問題協議会が「クリーニング事故賠償規準」の第4次改訂を発表しました。ポイントとしては、第3条にある「過失の推定」という言葉が「クリーニング業者の責任」という言葉に改訂されました。この言葉の改訂により、クリーニング店の賠償責任を負うときと免れるときを条文化しているこの3条の特徴が明確になりました。では賠償を免れるときとは、どのようなときを指すのでしょうか。これは改訂の範囲ではありませんがいっしょに考えていきたいと思います。

賠償規準の文面を見るとクリーニング店が「業務の遂行において注意を怠らなかったとき」と「過失の原因がその他の第三者にあることが証明されるとき」とあります。この第三者で代表的なものは、アパレルメーカーです。たとえばメーカーサイドで色止めがちゃんとされていなければ色落ちする衣類があります。ご存知の通り、ドライクリーニング可と表示されていてもドライ溶剤で濡らすと色落ちする場合もあります。最悪なのは一緒に洗った衣類に色移りすること。それが高級ブランド品であれば大きな賠償問題となるでしょう。クリーニング店が注意を怠らず、その原因が第三者であるアパレルメーカーであることが証明できれば、クリーニング店は賠償責任から免れます。ただし、この3条では利用者の「最大限での支援」をクリーニング店に求めている内容が盛り込まれています。つまり最終的な解決までクリーニング店はお客様をサポートしていく必要があるため、そこには手間も負荷もかかってしまうのです。

今回の事故賠償基準の改訂によってモンスターカスタマーから寄せられる無理難題へのガードはしっかりできるようになりましたが、クレームのすべてが大きく軽減されたわけではありません。「規準があるから大丈夫」という気持ちは持たずに、クレームやトラブルを未然に防ぐことができるようにしていきましょう。そのためには、従業員の受付段階での「意識」を高めることが非常に大切です。スタッフの不用意な一言で巨額の賠償責任を負うことになってしまった事例などを伝え、スタッフの意識を常に高め続けることが重要と言えます。

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